本年6月、イタリアのユネスコ世界遺産登録はさらに2つ増えて47(世界一)となりましたが、今回はその新世界遺産のひとつ「イタリアのロンゴバルド族: 権勢の足跡(568〜774年)」をご紹介いたします。
日本ではあまり知られていませんが、6〜8世紀のイタリアでのロンゴバルド族(ランゴバルド族ともいわれる北方からの民族)の権勢の足跡伝える教会、修道院、要塞などが新たに世界遺産に登録されました。
チヴィダーレ・デル・フリウリ、ブレシャ、ベネヴェントなど南北7つの地に点在していますので、イタリアでのロンゴバルド王国の歴史を探る新しいツアーなどのヒントになるかもしれません。
ロンゴバルド王国(イタリア語の音訳。ランゴバルド王国ともいわれる)は、568年ゲルマン系ロンゴバルド族により建国され6〜8世紀にイタリア半島を広く統治し独特の文化を発展させた後、774年カール大帝により滅ぼされました。
そのロンゴバルド王国の重要な権勢の足跡を示す7地域の要塞、教会、修道院などの建物が、2011年に世界遺産として登録されました。
ロンゴバルド族の建築スタイルは総じて古代から中世ヨーロッパへの変遷を示すもので、古代ローマの伝統、キリスト教的精神性、ビザンチン文化の影響そしてゲルマン系北欧様式を生かしています。
登録された下記7グループの文化財・史跡は、それぞれの特徴からロンゴバルドの重要な典型であったり、イタリア国内でも特に保存状態が良いものとして厳選されたもので、総体として最盛期ロンゴバルド文化の全容を映し出しています。つまりスカンジナビアから北東ヨーロッパを経由してイタリアに定住した後の、ロンゴバルド族の芸術的・建築的遺産の真髄を、これらの文化財史跡を通して知ることが出来るのです。
ロンゴバルド族はイタリアに定住すると、古代ローマの伝統様式やキリスト教の精神性、ビザンチン文化の影響などを吸収、同化し自らのゲルマン的価値とを融合させ、7世紀末から8世紀にかけて新しい独自の文化を生み出したのです。
近年の歴史学でも認識されているように、ロンゴバルド族はこうして古代と中世の過渡期の歴史の中で、主要な位置をしめる主役の一人として文化の流れを導きました。その後カール大帝に受け継がれ、古代世界から中世ヨーロッパへの形成に寄与し、その後の千年にわたる西洋史に大きな影響を及ぼしました。
【イタリア国内に残るロンゴバルド族の権威の軌跡】
1. チヴィダーレ・デル・フリウリ(Cividale del Friuli)の
「ロンゴバルドのテンピエット」(Il Tempietto Longobardo)
「カリスト司教が整備した教会関連施設群」(I resti del Complesso Episcopale rinnovato da Callisto)
「国立考古学博物館所蔵ロンゴバルド族副葬品」(Museo Archeologico Nazionale, corredi delle necropoli longobarde)
〔概要〕
ガスタルダーガ地区にあるサンタ・マリア・イン・ヴァッレ修道院(Chiesa di Santa Maria in Valle)の祈祷堂は、通称「ロンゴバルドのテンピエット」とよばれています。ロンゴバルド王国後期の最も重要な建物のひとつで、女性6体の中世では珍しい写実的立体的漆喰彫刻やフレスコ画、大理石の厚板、円柱、モザイク等見事な8世紀の内部装飾を見ることが出来ます。
また当時のカリスト司教が整備増築した教会や聖堂群や、ロンゴバルド族の墓にあった副葬品も登録されました。
〔所在地〕
チヴィダーレ・デル・フリウリ(Cividale del Friuli) --- フリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州
→ウディネ(Udine)の東16km、トリエステ(Trieste)の北西65km、ヴェネツィアの北東144km
2. ブレシャ(Brescia)の
「サン・サルヴァトーレ=サンタ・ジュリア修道院」(Il complesso monastico di San Salvatore-Santa Giulia)
〔概要〕
ロンゴバルド王国のデジデリオ王が即位前の753年に創建したサン・サルヴァトーレ修道院は、後世の大規模な増改築により、教会や回廊とともに合体して現在はブレシャ市立博物館となっています。
修道院はもともと古代ローマ時代の邸宅跡に建てられ、現在も修道院周辺には北イタリアを代表する多くの古代ローマ時代の.跡が残されています。
〔所在地〕
ブレシャ(Brescia) --- ロンバルディア州
→ミラノの東93km、ヴェローナの東66km
3. カステルセプリオとトルバ(Castelseprio-Torba)の
「カストラム」(Castrum、要塞地区)
〔概要〕
古代ローマ時代からのカルテルセプリオとトルバの両町に広がるカストラムという要塞地区をロンゴバルド族は再利用し、その建物跡が今も残っています。
トルバの塔は、後期ロンゴバルド期に修道院となり、有名な「サンタ・マリア・フォリス・ポルタス教会」(Santa Maria foris Portas)は、町壁の外に7〜8世紀に建てられ、その壁は貴重なフレスコ画で飾れています。
〔所在地〕
カステルセプリオとトルバ(Castelseprio-Torba) --- ロンバルディア州
→ヴェレーゼの南14km
4. クリトゥンノ(Clitunno)の
「クリトゥンノのテンピエット」(il Tempietto del Clitunno)
〔概要〕
小さな建物ながら、その古典的な様式と戦利品の品々が建物内に多用されていることで有名です。
ルネッサンス期以降も建築的に不朽の名声を何世紀に渡り保っていました。
〔所在地〕
カンペッロ・スル・クリトゥンノ --- ウンブリア州
→ペルージャの南西53km スポレートの北11km
5. スポレート(Spoleto)の
「サン・サルヴァトーレ聖堂」(Basilica di S.Salvatore)
〔概要〕
ロンゴバルド建築の代表例のひとつで、古典的ローマ様式を踏襲し、外部、内部ともに中世の石工達による優れた建築的装飾細工が施されています。
〔所在地〕
スポレート(Spoleto) --- ウンブリア州
→ペルージャ南東63km
6. ベネヴェント(Benevento)の
「サンタ・ソフィア教会」(Chiesa di Santa Sofia)
〔概要〕
サンタ・ソフィア教会はロンゴバルド建築の中でも最も多面的な構造を持ち、保存状態の良い建物のひとつで、中世初期ベネヴェント絵画と呼ばれるフレスコ画断片が内部を飾っています。また、隣の現在サムニウム博物館となっている部分との間には美しい回廊があります。
〔所在地〕
ベネヴェント(Benevento) --- カンパニア州
→ナポリ北東71km
7. モンテ・サンタンジェロ(Monte Sant'Angelo)の
「サン・ミケーレ聖所記念堂」(Santuario Garganico di San Michele)
〔概要〕
サン・ミケーレ聖所記念堂は、ロンゴバルド族統治の7世紀から、大天使ミカエル崇拝の重要拠点となり、その後も西洋諸国での大天使ミカエル信仰に深く影響を及ぼし、ヨーロッパ各地に建設された有名なモン・サン・ミッシェルを初めとする何百もの聖ミカエル聖堂のモデルともなりました。
〔所在地〕
モンテ・サンタンジェロ(Monte Sant'Angelo) --- プーリア州
→フォッジアの北東59km、バーリの北西135km
※詳細:
* ユネスコ世界遺産に登録された場所(ユネスコサイト)
http://whc.unesco.org/en/list/1318 (英語)
* 様々な情報を写真や地図で紹介するサイトもぜひご覧ください
http://www.italialangobardorum.it/ (英語)
日本ではあまり知られていませんが、6〜8世紀のイタリアでのロンゴバルド族(ランゴバルド族ともいわれる北方からの民族)の権勢の足跡伝える教会、修道院、要塞などが新たに世界遺産に登録されました。
チヴィダーレ・デル・フリウリ、ブレシャ、ベネヴェントなど南北7つの地に点在していますので、イタリアでのロンゴバルド王国の歴史を探る新しいツアーなどのヒントになるかもしれません。
ロンゴバルド王国(イタリア語の音訳。ランゴバルド王国ともいわれる)は、568年ゲルマン系ロンゴバルド族により建国され6〜8世紀にイタリア半島を広く統治し独特の文化を発展させた後、774年カール大帝により滅ぼされました。
そのロンゴバルド王国の重要な権勢の足跡を示す7地域の要塞、教会、修道院などの建物が、2011年に世界遺産として登録されました。
ロンゴバルド族の建築スタイルは総じて古代から中世ヨーロッパへの変遷を示すもので、古代ローマの伝統、キリスト教的精神性、ビザンチン文化の影響そしてゲルマン系北欧様式を生かしています。
登録された下記7グループの文化財・史跡は、それぞれの特徴からロンゴバルドの重要な典型であったり、イタリア国内でも特に保存状態が良いものとして厳選されたもので、総体として最盛期ロンゴバルド文化の全容を映し出しています。つまりスカンジナビアから北東ヨーロッパを経由してイタリアに定住した後の、ロンゴバルド族の芸術的・建築的遺産の真髄を、これらの文化財史跡を通して知ることが出来るのです。
ロンゴバルド族はイタリアに定住すると、古代ローマの伝統様式やキリスト教の精神性、ビザンチン文化の影響などを吸収、同化し自らのゲルマン的価値とを融合させ、7世紀末から8世紀にかけて新しい独自の文化を生み出したのです。
近年の歴史学でも認識されているように、ロンゴバルド族はこうして古代と中世の過渡期の歴史の中で、主要な位置をしめる主役の一人として文化の流れを導きました。その後カール大帝に受け継がれ、古代世界から中世ヨーロッパへの形成に寄与し、その後の千年にわたる西洋史に大きな影響を及ぼしました。
【イタリア国内に残るロンゴバルド族の権威の軌跡】
1. チヴィダーレ・デル・フリウリ(Cividale del Friuli)の
「ロンゴバルドのテンピエット」(Il Tempietto Longobardo)
「カリスト司教が整備した教会関連施設群」(I resti del Complesso Episcopale rinnovato da Callisto)
「国立考古学博物館所蔵ロンゴバルド族副葬品」(Museo Archeologico Nazionale, corredi delle necropoli longobarde)
〔概要〕
ガスタルダーガ地区にあるサンタ・マリア・イン・ヴァッレ修道院(Chiesa di Santa Maria in Valle)の祈祷堂は、通称「ロンゴバルドのテンピエット」とよばれています。ロンゴバルド王国後期の最も重要な建物のひとつで、女性6体の中世では珍しい写実的立体的漆喰彫刻やフレスコ画、大理石の厚板、円柱、モザイク等見事な8世紀の内部装飾を見ることが出来ます。
また当時のカリスト司教が整備増築した教会や聖堂群や、ロンゴバルド族の墓にあった副葬品も登録されました。
〔所在地〕
チヴィダーレ・デル・フリウリ(Cividale del Friuli) --- フリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州
→ウディネ(Udine)の東16km、トリエステ(Trieste)の北西65km、ヴェネツィアの北東144km
2. ブレシャ(Brescia)の
「サン・サルヴァトーレ=サンタ・ジュリア修道院」(Il complesso monastico di San Salvatore-Santa Giulia)
〔概要〕
ロンゴバルド王国のデジデリオ王が即位前の753年に創建したサン・サルヴァトーレ修道院は、後世の大規模な増改築により、教会や回廊とともに合体して現在はブレシャ市立博物館となっています。
修道院はもともと古代ローマ時代の邸宅跡に建てられ、現在も修道院周辺には北イタリアを代表する多くの古代ローマ時代の.跡が残されています。
〔所在地〕
ブレシャ(Brescia) --- ロンバルディア州
→ミラノの東93km、ヴェローナの東66km
3. カステルセプリオとトルバ(Castelseprio-Torba)の
「カストラム」(Castrum、要塞地区)
〔概要〕
古代ローマ時代からのカルテルセプリオとトルバの両町に広がるカストラムという要塞地区をロンゴバルド族は再利用し、その建物跡が今も残っています。
トルバの塔は、後期ロンゴバルド期に修道院となり、有名な「サンタ・マリア・フォリス・ポルタス教会」(Santa Maria foris Portas)は、町壁の外に7〜8世紀に建てられ、その壁は貴重なフレスコ画で飾れています。
〔所在地〕
カステルセプリオとトルバ(Castelseprio-Torba) --- ロンバルディア州
→ヴェレーゼの南14km
4. クリトゥンノ(Clitunno)の
「クリトゥンノのテンピエット」(il Tempietto del Clitunno)
〔概要〕
小さな建物ながら、その古典的な様式と戦利品の品々が建物内に多用されていることで有名です。
ルネッサンス期以降も建築的に不朽の名声を何世紀に渡り保っていました。
〔所在地〕
カンペッロ・スル・クリトゥンノ --- ウンブリア州
→ペルージャの南西53km スポレートの北11km
5. スポレート(Spoleto)の
「サン・サルヴァトーレ聖堂」(Basilica di S.Salvatore)
〔概要〕
ロンゴバルド建築の代表例のひとつで、古典的ローマ様式を踏襲し、外部、内部ともに中世の石工達による優れた建築的装飾細工が施されています。
〔所在地〕
スポレート(Spoleto) --- ウンブリア州
→ペルージャ南東63km
6. ベネヴェント(Benevento)の
「サンタ・ソフィア教会」(Chiesa di Santa Sofia)
〔概要〕
サンタ・ソフィア教会はロンゴバルド建築の中でも最も多面的な構造を持ち、保存状態の良い建物のひとつで、中世初期ベネヴェント絵画と呼ばれるフレスコ画断片が内部を飾っています。また、隣の現在サムニウム博物館となっている部分との間には美しい回廊があります。
〔所在地〕
ベネヴェント(Benevento) --- カンパニア州
→ナポリ北東71km
7. モンテ・サンタンジェロ(Monte Sant'Angelo)の
「サン・ミケーレ聖所記念堂」(Santuario Garganico di San Michele)
〔概要〕
サン・ミケーレ聖所記念堂は、ロンゴバルド族統治の7世紀から、大天使ミカエル崇拝の重要拠点となり、その後も西洋諸国での大天使ミカエル信仰に深く影響を及ぼし、ヨーロッパ各地に建設された有名なモン・サン・ミッシェルを初めとする何百もの聖ミカエル聖堂のモデルともなりました。
〔所在地〕
モンテ・サンタンジェロ(Monte Sant'Angelo) --- プーリア州
→フォッジアの北東59km、バーリの北西135km
※詳細:
* ユネスコ世界遺産に登録された場所(ユネスコサイト)
http://whc.unesco.org/en/list/1318 (英語)
* 様々な情報を写真や地図で紹介するサイトもぜひご覧ください
http://www.italialangobardorum.it/ (英語)
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