９月中旬、山々に秋の気配が訪れる頃、アルプスに広がる町や村を訪れると華やかな飾りを付けた牛たちの行列に遭遇する事があるかもしれません。
これは夏の間、高原の牧草地で放牧されていた牛たちが里帰りするために山を下りるという、この地方恒例の行事です。この伝統的な行事は、文化的にも宗教的にも重要な意味を持ち、農夫たちはこのお祭で牛を病や事故から守ってくれた神に感謝の祈りをささげます。

放牧期間である３ヵ月の間、たった一人で暮らしてきた牧夫や牧婦たちは、このお祭のために牛を華やかに飾り付けます。「アウフビッシェン」と呼ばれるこの飾りは、木の枝で作られた冠に薄紙を巻きつけ、レースや星の飾りを付けたもので、全て手作りで作られ４０時間をも要するので、この頭飾りは優秀な牛にしか与えられません。
華やかに飾られる牛たちの行列ですが、もしもその年の間に牛が死んだり、牧夫の家に不幸があったりした場合は、その家の牛たちは飾りを付けずに里に下ろされます。

このお祭で牛たちに付けられる飾りの中で、もうひとつ重要なものに「カウベル」があります。牛たちの歩みとともに情緒豊かに鳴り響くカウベルの音色は、はるか遠くまで聞こえます。
牛たちの行列はお昼頃には町や村に到着します。主役の牛たちが到着した後は、食べて、飲んで、踊って、大いに楽しむお祭の始まりです。
ほとんどの町や村では、お祭のほかに、農家主催の市場も開かれます。