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都市別トラブル事例集

アメリカ ニューヨーク / ニューヨークに見る観光復興策

掲載日時:2002年04月19日

情報提供:国際観光振興会(JNTO) ニューヨーク事務所

2001年9月11日に発生したワールドトレードセンター爆破に始まる同時多発テロ事件は、全世界を震憾させ、その衝撃と一連の炭疽菌騒動は観光客の動きを止め、ニューヨークの観光業界に壊滅的とも言える打撃を与えた。

今回はニューヨークの観光復興策から、観光受け入れ都市における緊急時の対応について考えてみたい。


■市の経済を揺るがすダメージ

ニューヨーク市では、観光は第2位の主要産業。2000年には観光客の直接消費額170億ドルを含め、年間250億ドルの収入をもたらし、ホテル、レストラン、劇場などの観光関連業種に28万2000人の雇用を産み出している。

ビジネス旅行客が多いニューヨークでは、ビジネスが最も活発になる9月から12月のクリスマスまでの4ヵ月がピークシーズンとなる。2000年はホテル料金が平均約237ドル、コーポレートでも300ドルや400ドルとなる施設も少なくなく、それでも占有率は常時85%を超えており、まさに稼ぎ時であった。テロ事件が起こったのはその時である。

9月から11月の各施設収入予測は、2000年に比べ、約20%から50%近く減少している。なかでも影響が大きいのはレストラン業である。外食産業が発達しているニューヨークでは、一般市民やビジネスマンが日常的にレストランを利用しているが、事件後は家庭での団欒を求め外食を控える風潮やビジネス旅行の中止による会食等が激減したため、利用率は昨年比47%減となった。

11月までにすでに約30店が閉鎖し、40店が一時休業に追い込まれている。11月までに解雇された観光関連業従事者は、11万人といわれている。


■I LOVE NEW YORKキャンペーン

10月2日、ニューヨーク州のパキタ知事は、ニューヨーク市の観光事業を救済するため「I LOVE NEW YORK」広告キャンペーンの実施を宣言した。州予算と、空港や市内交通機関を管理するポートオーソリティーからの共同出資による4,000万ドルを資金とし、メディアを使って大々的にニューヨーク市への観光誘致を広報する企画である。

「I LOVE NEW YORK」はニューヨーク州の観光キャンペーンロゴとして策定されたもので、2002年で25周年を迎える。今回は特に市の観光事業に焦点を置き、通常のロゴに加え「Stronger Than Ever」と、トリコロールカラーのリボンを復活の象徴に使用した。

パキタ州知事やジュリアー二市長のほか、ニューヨーク在住のスポーツ、映画など各界の著名人がこぞって出演し、「I LOVE NEW YORK」を口に元気な街の様子と活気をPRしている。

また、そのほかにも、ウッディ・アレンなど人気俳優を活用した4種類の物語風コマーシャルフィルム「The New York Mirac1e, Be a part of it」も11月8日から年末まで放映された。このビデオは「ニューヨークミラクル」のサイトでダウンロードでき、PRに協力する団体等には貸し出し可能である。
( http://www.nycmiracle.com/ )


■迅速な決断力

ニューヨーク市観光局NYC&Companyでは、広告と同時進行で以下の観光客誘致プログラムを用意した。

1) I LOVE NEW YORK RESTAURANT WEEK
市内150店の人気レストランで3コースランチおよびディナーを、通常のほぼ半額程度で提供。従来は春と秋の2回、ランチのみのプロモーションであったが、ディナーを追加導入。
2001年10月15〜21日に実施済み。市民を対象にして実績を上げたと考えられる。

2) Paint the Town Red, White and Blue
従来、冬の観光客誘致活動で行っていた「Paint the Town Red」の拡大版。レストラン、ミュージアム、小売店に加え、初めてホテルが参加し、全体約350の観光施設で割引を提供する。これらに市内観光ツアー等を組み合わせたパッケージも用意している。2001年11月から2002年3月まで。

3) デルタ航空1万フリーチケットキャンペーン
デルタ航空ウェブサイトのEメール・メーリングリスト登録者の中から6ヵ月問で1万人にニューヨーク無料往復航空券の当たる懸賞を実施。

驚くべきは、これらの政策が事件後約3週間で企画・承認され、実施に至っていることである。復活にかける市民の強い意志と団結力、それを引っ張るリーダーの決断力の速さに感銘を受けた
。ニューヨークの復活がすなわち米国の観光経済の復活と言っても過言ではない。

クリスマスシーズンを終え、国内観光客は戻りつつある。しかし、海外からの観光客の復活予測は厳しい。2000年レベルに戻るには、ヨーロッパが早くて2003年から2005年、日本人観光客に至っては最も遅く、2006年以降まで見通しが立たないといわれている。

英国に次いで400億円を落とす日本人観光客をニューヨーク市民は期待を込めて待っている。12月にはすでにカナダから総理大臣に引率された3,000人を超える激励観光団がニューヨークを訪れた。

この時期に居合わせた我々がすべきことはインバウンド、アウトバウンドにこだわらず、ニューヨークの現実を正しく認識し、米国と日本間の人の流れを戻すことなのではないだろうか。


データ及び情報出典:
http://www.nycvisit.com/ , New York City\'s official tourism web site(NYC & Company)
http://www.twcrossroads.com/ (Travel Weekly)

※本記事は「国際観光振興会 海外旅行情報」より転載致しました。