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メキシコ / メキシコの鉄人が行く! 旅日記 〜 ユカタン半島に移動するマングローブ林あり! 〜

掲載日時:2008年02月01日

情報提供:株式会社メキシコ観光

ユカタン半島の「セレストゥン」(Celestun)という入り江に生えるマングローブ林は、時に移動するといいます。林や森というものは、日本では移動不可能と思われておりますが、マングローブ林は移動可能であるとの事!
移動する林見たさに、ユカタン半島 セレストゥンへと旅立つ事にいたしました。

待望のマングローブ林とのご対面の第一印象は
「アナタ、普通の植物じゃないでしょ? だって、根っこが大地の上に出ているし、下半身水浸しだし、その水だって海水でショパイでしょ。 死にかけているはずなのに葉っぱは緑かつフサフサで元気イッパイ。 アナタって素人じゃないんじゃない? 変な林」というのもでありました。
なぜなら木というものは、根を大地深くに生やし人様にお見せしないのが礼儀で、根っこを見せた木は「死病にかかっている」か「露出狂」かのどちらかしかないからです。 
この私の暴言を聞いたマングローブが黙っているはずはありません。彼(彼女)はマングローブの名誉にかけて反撃に出てきました。
「それは違うヨ、そこの人間さん! 我がマングローブ軍団が海辺近くに住み、海水に浸りながら生きる道を選んだのは、素人の林にはない能力を持っているからで、死病に罹っているからでも、露出狂でもないのですヨ。
まずは水面に落ちている黄色い葉をご覧あれ。これが何を意味するかあなたにわかるかい?」
当然、そんな事はわかる訳が無いので、謙虚にマングローブさんの有難い説明を聞く事といたしました。

彼(彼女)曰く「海水に浸っているから塩水を吸い上げて生きている」と思うのは間違いで、マングローブは塩水を濾過して真水に変える機能を備えている。人間の最新技術でも難しい事をマングローブは地上に生まれた時から身に付けていた様です。
では、塩水を真水にした時に残った塩分の行方はどうなったのか? それが水面に落ちている黄色い葉なのです。
塩分を全面的に吸い取った葉は、仲間の緑葉生存のため、黄色くなって落ちるとの事。「これが同志愛、自己犠牲、涙無くして語れるか!」(マングローブさん、泣かないで。)
根っこが大地の上に出ているのにも訳があり、これは酸素不足の湿地帯から酸素を取る苦渋の策で、葉と根の両方で酸素不足を補っているとの事。(露出狂ではなかったのね。ゴメンナサイ。)
それに常に水浸しになっているわけではなく、海面が満潮時の時は海面が上がるため下半身が水につかってしまいますが、水が引けば湿地帯に戻るため、下半身は無事だとの事です。

最後に私の一番知りたい「マングローブ林は時に移動する」理由を尋ねてみました。
彼(彼女)曰く「マングローブは海水が引いた時の平均海面から、満潮時の最高海面の間に生息する。よって温暖化現象等で平均海面が上がると常に水浸しになってしまうため林ごと上に移動する。又、平均海面が下がる事があれば、今度は乾いてしまうので下に移動するのですヨ!」と言います。だから「マングローブ林は移動する」といっても、毎日引越ししている訳ではないそうです。
平均海面が変化するのは、地球上の気候変化に関係があり、マングローブ林移動の痕跡を見れば、古代からの地球の気候・地形変化が解明出来るのだと言います。
    
今まで「マングローブ」と、あたかも木の名前のように言ってきましたが、これは間違いで、本当の所は「入り江など満潮時になると海水に浸る場所に生える植物一般」に付けられた名前だとの事です。
雪の降る高山に生える植物を一般に「高山植物」と呼びますが、これと同じ考えだと言えばおわかりいただけるでしょう。


(この記事は、UMAN大学 教授 田中都紀代様がご寄稿くださいました)