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メキシコ / メキシコの鉄人が行く! 旅日記 〜 地球の聖地、モナルカ蝶のミチョアカン 〜

掲載日時:2008年02月29日

情報提供:株式会社メキシコ観光

約4億羽の蝶が、カナダ・アメリカ国境の森林から、ミチョアカン州に飛来する???
この神話を確かめるべく、モナルカ蝶の聖地 ミチョアカン州 ロサリオ山中へ旅立ちました。そこで見たものは!空中を埋め尽くし、太陽光をも曇らせる蝶の乱舞でありました!!
童謡唱歌「蝶々、蝶々、菜の葉に止まれ、菜の葉に飽いたら桜に止まれ」と日本では歌いますが、この常識はモナルカ蝶には通じません。なぜならモナルカ蝶は唐綿しか食べないグルメな蝶だからです。

約4億羽がカナダとアメリカの国境(ロッキー山脈)から4,000kmも飛行し、ミチョアカン州で越冬する理由は、冬に唐綿が食べられるからだと言われています。約4億羽のうちの1億数千羽がロサリオ山中に滞在、その他は唐綿地帯を求めて分散すると言います。
 それにしてもモナルカ蝶の唐綿に対する執念は、少々異常ではないでしょうか?
 いくらグルメな蝶でも、食事のために4,000kmの距離を飛行するものでしょうか?
 近場のチューリップで空腹を充たす訳には、いかないのでしょうか?
とこの様な事を思ってしまいますが、それがダメなのです。
なぜなら、モナルカ蝶は「毒物アルカロイド」(モルヒネ等もこのアルカロイドの一種)中毒だからというのがその理由です。毒物アルカロイドを含む唐綿を食べていないと、身が持たないのです。
だからといって、モナルカ蝶を悪者呼ばわりしてはいけません。これは、か弱いわが身を外敵から守る究極の手段なのです。
このアルカロイドは体に影響を及ぼす劇薬なので、外敵の鳥やアリ等がモナルカ蝶を口に入れたとたんに心臓麻痺を起こして倒れる、そのためモナルカ蝶には手を出さなくなったと言う訳です。
もちろん、モナルカ蝶は先祖代々この毒物を食べ続けているので、全然平気です。

ところが4,000km飛行の理由は、これだけではありませんでした。
越冬には、寒い夜長を羽を寄せ合って泊まる枝が必要となりますが、これがOyamel、いわゆるクリスマス・ツリーで有名なモミの木でなければダメなのです。
当然一本の枝に何千羽も止まりますので、遠目にはゴミの塊のようにしか見えません。
又、高度3,000m、平均気温0度で、酸素充分の森林が越冬条件となると、地球広しと言えども場所が限られてまいります。この条件に合致する場所がミチョアカン州 ロサリオ山中なのです。
しかしモナルカ蝶の越冬地がミチョアカン州山中と発見されたのは1975年の事で、それまではもっと南のトロピカル地域と信じられておりました。
尚、この場所を発見したのは、トロント大学の昆虫学者 Fred Urquhart氏で、発見当時は快挙とも言われましたが、ミチョアカンの人々は太古の昔からこの事を知っていたと言います。尚、モナルカ蝶が4,000kmもの距離を飛行するのがわかったのは、このFred Urquhart氏がここまで蝶を追っかけて来たからなのです。

このモナルカ蝶の活動パターンは、気温が上がる10時頃に起床、気温が下がる16時頃に就寝、その間、時速20kmで飛び、一日120km前進、約25日間で4,000kmの飛行を完了します。
ミチョアカン州の山中へは約5ヵ月間滞在し、里帰り前に出産します。尚、このモナルカ蝶は、飛行中、強風時は羽をV字型にたたんで直風を避け、弱風時は羽を広げて風に乗るのとの事です。

しかし発見はそれだけではありません。モナルカ蝶は一般の蝶より5倍以上も長寿なのです。一般の蝶は卵〜幼虫〜さなぎまでが1ヵ月、蝶になって1ヵ月、子孫を残した後に他界となりますが、このモナルカ蝶は10月から2月までの5ヵ月の間、蝶のまま生き延びるのです。この長寿の秘訣はこの間「子孫繁栄」をしない事にあると言われています。モナルカ蝶は春を待って一気に「子孫繁栄」をするのです。
このミチョアカン州 山中で目撃される蝶の乱舞は、何とオス蝶がメス蝶を追いかけ廻す姿だったのです。
見事にメス蝶をゲットしたオス蝶は、子孫を残した後に他界いたしますが、反対にメス蝶はこの元気なオス蝶の協力で3回以上出産を繰り返します。
3月に卵から蝶に変身した二代目が北へと飛び立った後は、親蝶の死骸で地面が埋まるとの事です。
この二代目の蝶は、ロッキー山脈で春を迎えるため成長が早く、すぐに子孫をつくり他界、その後誕生する3〜4代目も夏の季節に子孫をつくり他界、秋に誕生する5代目が長寿を願って越冬地のミチョアカンへやって来ると言われています。
又、大変不思議な事に、モナルカ蝶は秋分の日に北から南へ、春分の日に南から北へ飛び立つそうです。

この様な活動を人類誕生以前から繰り返していたモナルカ蝶を見て、雄大な地球史の一片を垣間見た思いがいたしました。
ちなみに、このモナルカ蝶の日本名は「オオカバマダラ」だそうです。



(この記事は、UMAN大学 教授 田中都紀代様がご寄稿くださいました)