アルプスを望む山岳地帯に位置し、冬になると気温が氷点下にまで達するチロル地方。
オーストリアでも有数の寒いエリアだけに、防寒性・保温性に優れた衣料品が多く見受けられます。寒冷地でのファッションはデザイン製よりも機能が優先されがちですが、チロルは長らくハプスブルク家の統治下にあっただけに、洗練された瀟洒なものが多いのです。
時にそれは「チロリアンスタイル」と称され、世代を超えた多くの人々に愛されています。

まずは「チロル風の装い」ですぐに思い浮かべる「チロリアンハット」。ワンポイントの羽飾りが効いた、軽くてあたたかいフェルト製の帽子です。日本ではシニアのタウンハットとして最も人気があり、シックなデザインのものも見られます。

続いては、編み目が詰まっていて風を通しにくい圧縮ウール「ローデン」で作られる厚手の「チロリアンジャケット」。 オーストリアでのチロリアンジャケットは、襟のないデザインのものが主流。ローデンは羊毛を脱脂せずに織ったものなので、防水性に優れ、雪の日のお出かけにもぴったりです。

「チロリアンシューズ」は、甲の部分に椀型カーブを持つ、革製のひも靴です。シンプルなデザインのため、登山はもちろん、タウンシューズやビジネスシューズとして愛用する人も少なくありません。

そして、チロルのファッションのスパイスとして忘れてはならないのが、美しい色の糸で刺繍された手芸テープ「チロリアンテープ」です。花や動物などの愛らしい模様が織り込まれたこのテープは、チロリアンハットの飾りや、チロリアンジャケットの襟やポケットのパイピングなどに使われ、個性あるチロルのファッションをさらに独特なものにしています。

洗練された中にもどこか素朴なかわいらしさのあるチロリアンスタイル。
寒さが特に身にしみるこの冬、山岳地帯の人々の知恵が生きたチロル風のファッションで、あたたかく過ごしてみませんか？